霧向の街

kirimukai no machi

unknown


何者であっても構わなかった

己にとって相手の過去とはなんら影響を及ぼすものではないと理解していた。

少しずつ知り得ながら、知恵の輪を解くように暴かれていっても。

それは誰に限った話ではなく、理由としては二つ、対象人物により異なりつつも存在している。

一に他人にさして関心があるわけではないこと

二にそれを知ったところで過去のなにが変わるわけでもなければ、過去に影響を受けた現在が知る知らぬの事象で大きく変わるわけでもないこと

が起因している。

秘密にされれば欲求としてでてくるものだが、人の顔を伺って良し悪しを判断していた幼少期の癖で言動のひとつひとつに推察する癖がついてしまって、当たらずも遠からずの塩梅に人の告白に驚くということはさしてない。

心地としてはテストの答え合わせのようなそんな心持ちですらあって、実に冷たい人間だと呆れる。

故に、語り部がなにかしらを語ろうと杞憂されるようなことはほとほとなく、態度は変わることはないとも言える。

しかしながら、拾い集めた過去の一言が胸に沁みるときには、誰よりも大切に慈しみたいと思う。

過去で立ち止まる小さな背ではなく、細々としたその先を気丈に振る舞って手探りで歩くその姿を。

出来るならば、その横を歩いてけして綱渡りではないことを提示しながら、拾い集めた言の葉がそのまませめても先に繋がっていくように。